第1回「日本におけるメンタリングとその展開」②

・日本のメンタリングの特徴
・これからのメンタリング

 

 

 

【日本のメンタリングの特徴】

米国と日本のメンタリングとはその状況もニーズも随分違います。米国では、メンタリングは文化として根付いており、メンティーは若年とも限りません。メンティーが自らメンターを探し、メンターも快く受けてくれる文化があるようです。日本では、人事など会社が主導して、メンターとメンティーを指名するような制度が一般的ですし、メンティーの多くは、新卒新入社員です。

 

米国では、職業としてのキャリア形成が大きなテーマとなりますが、日本においては、そのようなテーマのメンタリングにはなりにくい状況があります。これまでは、キャリアアップは、組織の中で達成していく企業文化がありました。ですから、キャリアと言っても、職場の仕事のスキルアップとなりがちです。本来、キャリアとなれば、将来像を意識する必要があります。それは、職場内だけなのか、他のセクションへの異動も考慮しているのか、それとも組織を離れることもあり得るのかを、必然的に考えることになります。新入社員に対するブラザー制度やエルダー制度では、そこまでの話は想定されていないことが殆どですし、その延長線上のメンタリングも同様です。

 

メンタリング実施の目的の多くは、新入社員の早期退職防止および定着化です。「新入社員に安心して長く働いてもらいたい」ということになります。そのために、仕事や職場のことだけではなく、プライベートなことまで、気軽に相談に乗れるメンタリングが必要と考えられています。ここに、日本におけるメンタリングの特徴があります。

 

以前は、国内の組織文化のなかでも、単なる仕事の話しだけではなく、職業人生としての話をする機会は多かったと感じています。今に比べ、酒席の場や喫煙場所のように、この種の話のしやすい場がありましたし、ある程度プライベートな話や将来の話に踏み込んで話せる雰囲気もありました。そこでは、身近で私的な相談をする機会もあったように感じています。今では、そのような話をする機会も雰囲気も減っています。そのためメンターの存在、メンタリングの必要性を企業は感じています。

 

 

【これからのメンタリング】

新入社員の定着が目的とすれば、新入社員には将来的なキャリアの話より、職場や仕事に馴染むことの話の方が、新入社員にとって大事かも知れません。ですから、日本的な「どのような些細なことでも相談できるメンタリング」が第一に求められています。それはメンタリングをするうえでの基本的態度であり、必要不可欠なことです。

 

今の時代は、もはや単一の職場内でキャリアを終えることは、ますます少なくなってきています。若い人であればあるほど、その感覚は普通のことになってきていることでしょう。以前に比べ、新入社員であるメンティーの要望としても、キャリア形成につながるようなメンタリングを求めている風潮を感じます。身近な相談を受けるメンタリングに加え、将来を見据えたキャリアの話がテーマになるメンタリングが必要になってきています。

 

        アンケートや実験などの検証によるものではなく、あくまでも経験と感覚によるものであることをご了承ください。

                          ※本文は人材開発情報誌『企業と人材』2019年4月号に掲載されました。