メンター制度の導入の究極の目的が、「職場のコミュニケーションの活性化」といえるかも知れません。というのは、社員の早期退職の問題も、メンタルヘルスの問題も、職場における日常のコミュニケーションの不足が大きな原因である場合が多いからです。また、職場のコミュニケーションを活性化することで、よいリーダーが育ち、女性社員の活躍を後押しすることにもつながるからです。
職場のコミュニケーションを活性化するには、メンバーのコミュニケーションの質を向上させる必要があります。この質について、当協会では、図1のように、3つの側面から伝えています。「論理」「共感」「人間関係」の3つの側面です。
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コミュニケーションの質・3つの側面(図1)
論理的側面~「わかりやすく伝える、正確にきく」
・自分の話を、整理して、分かりやすく論理的に伝える
・相手の話を、理解できるように確認・整理しながら、正確にきく
共感的側面~「気持ちを通じ合わせる」
・自分の気持ちを、声色・ジェスチャーなどで表現する
・相手の気持ちを、感じ取りながら聴く
人間関係的側面~「周囲との関係を良好にする」
・自分の考えや気持ちを、オープンにする態度・姿勢・考え
・相手のことに興味や関心を持ち、相手を受け容れる態度
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「論理的側面」は、「わかりやすく伝える、正確にきく」というような論理的な質です。
具体的には、自分の話を「伝えたいことを整理して、わかりやすく論理的に伝える」、相手の話を「理解できるように確認・整理しながら、正確にきく」ことです。
ビジネスコミュニケーションとかロジカルコミュニケーションと言われるものです。
コミュニケーションで伝え合うものに、「情報」と「感情」があります。論理的な側面のコミュニケーションは、情報の交換ですが、「共感」は感情面になります。「気持ちを通じ合うす」ことも大切なコミュニケーションの一つです。
メンタリングにおいては、こちらの方が論理的なコミュニケーションよりも大切です。メンタリングの教育で、共感的理解を向上させる「傾聴トレーニング」を行うのもそのためです。
しかし、最近では、その根底にある「人間関係」を良くするためのコミュニケーションの質を高めることがより必要と考えます。具体的には、「自分の考えや気持ちをオープンにすること」、いわゆる「自己開示」です。もう一つは、他の人に「関心・興味を持つこと」です。その2つが人間関係を良い方向に導き、「コミュニケーションのとりやすい雰囲気」をつくります。いくら論理的側面や共感的側面の質を上げても、「自分のことは話さない」「相手に興味がない」では、質の高いコミュニケーションは始まりません。
特に、最近では、後者の「他の人に対する関心・興味」に課題があるように感じます。今は、インターネットを中心に多くの情報が溢れています。その大量で様々な情報の中では、どうしても、自分と同じ志向の情報に目が向いてしまい、相対的に、自分に関係がないと思われる他人に対しての関心が薄くなってきているのかも知れません。
※人材開発情報誌「企業と人材」2020年1月号に掲載されました。